ボンタの狂人工房 オルガン作り

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巡宙艦ボンタ
およそ絵を描くことならなんでもやる 粘土もいじる 楽器ぽいものを作った 警視庁魔法少女課で企画原案とグラフィックとアニメーション スタジオポラリスお手伝い 高い城のアムフォ日本語訳のなかのひと
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おはよう!こんにちは!こんばんは!動くな武器を捨てろ手を組んで頭上へ挙げろ!ボンタです。Twitterとかで跳梁跋扈しています。

良いですよねTwitter。絵の描き方とマシュ・キリエライトとサメ映画について詳しくなれるし、あとたまに興味深い議論があったりします。最近面白かったのは「異世界ファンタジーにおける科学技術」問題。
この話題が活発になったとき、僕はちょうどファンタジー世界風の楽器(?)を作っていました。作りながら議題についてあれこれ考え、気づいたこと数多ありましたが、完成した時には話自体ひと段落ついてしまっていて、具体的にまとめる機会を逃しました。マヌケェ。

技術を試す

たとえば中世風ファンタジー異世界の技術について語るとき、現実の中世ヨーロッパについて語るのもいいし、もしくは作家の指先から生まれる無限の可能性について考えてもいいし、魔法や特殊な鉱石の存在を指摘してもいいでしょう。
でも、じゃあ実際にそれら技術を実装し、道具を作り出すにあたって、どんな材料、道具、もしくは計測器具や科学知識が必要か、はっきりとわかる人は少ないんじゃないんでしょうか。
今回の試みで見えてきたのは、実はその辺のことだったりします。

中つ国から爆裂魔法へ

どこかの世界のどこかの国。そこは、古より剣と魔法が守護し、数々の冒険譚が綴られてきた竜の王国だった………。

いわゆる中世風異世界ファンタジーの最も古典的な形って、だいたいこういうものだと思います(こういう出だし、めちゃくちゃわくわくしません? 僕はする)。
「指輪物語」、「ナルニア国物語」、「ゲド戦記」、「タランの冒険」………。
たくさんの名作古典ファンタジー小説が、「ここではないどこかの世界」を描こうと試み、その血脈をゲームブックが、TRPGが、日本においては「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」などのTVゲームが、または「ロードス島戦記」などのライトノベルが引き継ぎました。この大きな流れが、翻案、パロディを繰り返して「このすばらしい世界に祝福を!」などへとつながっていると思うと、なにか感慨深いものを感じますね。感じるんだよ。うん。
それはいいとして、このような架空の世界を描写するとき、作品世界に確かな実在感を与える鍵は、そこに住む人々が持つ、独自の文化の描写だと思います。
ここではないどこかの建築、ここではないどこかの服装、ここではないどこかの文字。華々しい魔法やエルフやドワーフたちの影で、たくさんのハイファンタジー作品をハイファンタジーたらしめている影の功労者が、彼ら文化だといえるでしょう。うむ。
んでまあ、どうやら人間は、何か特殊な事情がない限りは、文化の一つとして音楽を楽しみ、受け継いできたみたいなんです。現実の我が国でいえば、弥生時代にはすでに銅鐸という青銅製のひょっとしなくても楽器や鐘の類を持っていましたし、それより前の縄文時代でも、土鈴という、振るとカラカラ鳴るマラカスのような土器を持っていたので、音楽はそのころからあったのだと見做せるかもしれません。ひょっとしたら言葉ができる前から、声を出し歌うという形で存在していたということも、ありえますね。
最古参級の文化である音楽。異世界をいちから本気で描写したいのならば、これを避けて通るわけにはいかないでしょう。ヒュムノスを謳え。

異世界の音楽を作るんだよほら

音楽を作ると聞いて、作曲を思い浮かべる人は多いと思います。DTMが発達し、特段専門知識を持たなくても、PCを使えばそれっぽいものを作ることができるようになった昨今、作曲活動は思ったより身近になりました。
でも、そうじゃないんです。本気でやるなら楽器から作るべきなんです。異世界にはPCもピアノもないかもしれません。もしくは似たようなものでも構造や音階が違うかもしれません。どうしよう

 作りゃあいいんですよ………!

ようやく本題だよ

文字を追うのがめんどくさくてここまでスクロールしてきちゃったそこの君! そーう君だ。ここから読んでもなんら問題はないから、ぜひ本文に復帰するように。実際のところ、上のような長ったらしい動機を持ってこのチャレンジに挑んだわけでは、ない。ほぼない。
作りたいから作ったのだ。異世界の鍵盤楽器が。でも、「異世界の楽器を作りたいから作りました!」なんて言って往来を歩き、街中に「てーきゅう」のポスターをはりまくったら即狂人扱いを免れまい。これは正気を保つための序文だ。社会性フィルターとしての猫の声で、全裸中年男性のコートなのだ。
そういうわけで作るのは鍵盤楽器だ。ピアノに代表される鍵盤楽器はその構造の複雑性からか、音楽史の中で見ると比較的登場が遅い。
といっても紀元前にはあったらしい。アレキサンドリアの水オルガンがそれにあたる。これは大きい設置型のオルガンであり、水圧と空気圧を組み合わせ、パイプへと空気を送る。この仕掛けを手元でコントロールする方法として、鍵盤が生み出されたのかもしれない。鍵盤は指で押し下げるのではなく、上下に移動させるスライダーのようなものだったという。
時代が進んで暗闇の中世。なんで暗闇かというと、時代が進んでるのに文化が後退しているからだが、鍵盤楽器には進化があった。それは小型化だ。
この時代、音楽は宗教と密接につながりあっていた。カタコンベから解き放たれたキリスト教は荘厳で巨大な聖堂を作り、パイプオルガンで荘厳な音楽を流したがった。だが一方で市民にもほどほどな大きさのオルガンが普及したのだった。

みてくださいこれ。かわいらしいでしょう。
ポルタティーフオルガンと言って、膝にのせて弾いたり抱えたりできるくらいのサイズ。あらお手頃。たまに街角で弾いている人がいたりしたんでしょうねえ。
よし、君に決めた。これをモデルに作るぞ。

みんな 丸太は持ったな!! 作るぞォ!!
「ゼロからトースターを作ってみた結果」という本があり、これはイギリス人の著者が、鉄鉱石の採掘からはじめてトースターを作るというとにかくすごい本なんです。 が、僕は狂人ではないのでさすがに丸太からははじめません。足りない材料はダイソーで仕入れてきました。

  • なんか木の箱
  • 割りばしたくさん
  • 加工に苦労しまくった憎たらしく厚い木の板
  • ありえんほどうっすくて割れまくったぺらぺらの木の板
  • 特に厚い厚紙
  • 普通に普通の厚紙
  • いくらかの木ねじ
  • 輪ゴム
  • タコ糸
  • 木工用ボンド

以上です。なんだか小学生向けの工作本に載ってそうな感じですね。材料だけは。作業はほんと大変だった。

まず、すでに出来上がっている木箱に行き当たりばったりで鍵をつけました。


その後しばらく迷走したのちパイプを特に厚い厚紙で制作し、憎たらしい厚さの板で天板を作る。そして天板には四角い穴をあけ、そこに弁を設置しました。弁は鍵で引っ張られている間だけ開き、後は勝手に戻ってくれるように、輪ゴムで固定。ひっくりかえした箱の上面に、糸が引っかからない程度の小さな穴をあけ、弁につながる糸を通しておきます。次に、天板を箱上面へボンドで接着。空気漏れを防ぐため、すきまにダバダバと惜しげもなくボンドを注入します。


 

穴から出ているタコ糸に割りばしでできた鍵を結べば、鍵盤機構は完成です。やったね。ついでにパイプも5本つけました。調律できないから音階ガバですが………。
そしてふいごを制作。さきほど作った本体に穴をあけ、接着して完成です。


 

うおおおおお完成です。

楽器製作自体が初めてのことだったので、ここまでに一週間かかりました。スゲー頑張った。

演奏してるのがこちらです。ヘッボとか言わんといてください。これでも頑張ったんです。
ちゃんと音が出ると、そのたびに感動してしまうんです。鍵盤楽器を作った実感を得たくて、無意味に音を鳴らしてしまいます。

結局これはなんだったの?

さて、この完成したポルタティーフオルガンもどきは「ポルカ」と名付けられ、人形劇異世界YouTuber「高い城のアムフォ」の第二話で登場しましたが(唐突なステルスマーケティング)、この経験は僕に貴重な知見をもたらしてくれました。
まず、このような空気圧を利用する鍵盤楽器というものは、ゆがみや工作精度にとても敏感である、ということです。頼れるのはちいさなふいごだけ。効率のため、厳に気密を保たないといけないのです。漏れてるとスカとも鳴らなかったりします。木工用ボンドがあっても苦しめられたのに、中世でどのようにこれを防いだのか………。職人の腕と、信頼できる計測器具、特に物差しがないと不可能です。
それに、音と振動に関する知識も必要です。口で吹く笛から進歩して、いかに振動を発生させ、増幅させるか。ルネサンス以前の世界で、自然科学といえるほど体系的でないにしろ、感覚的な知識の積み重ねが求められていたでしょう。僕はそのことでたびたび先行例に助けられました。
衛生環境はひどく、ペストが猛威を振るい、道徳観は未発達で、非論理的で。たしかにひどい時代であることは間違いないのですが、しかしながら中世はそれほど舐めたものではない、特にこのような、市民の生活を少しでも彩るための技術では。というのが、僕の答えです。

戦いはまだまだ続く

今の日本で生きていると、身の回りに音楽が絶えることはなかなかありません。複雑な音を簡単に電子データに変換できるようになった今、スピーカーひとつスマホひとつあれば、音楽を楽しむことができます。あるいは、商品やイベントの広告戦略として、施設のBGMとして、名曲といわれる曲ほど繰り返し使われています。
それは悪いことでは決してありません。だれもが音楽に触れやすくなったということなのですから。上質な音楽に触れるためには教会まで出向かなければいけなくて、音楽家の卵が大変な苦労をしていた時代だって、だいぶ長かったですし。
でも、そのような時代から、それより前の世界を見ているとき、ともすればその事を忘れてしまっている場合があるのではないか、と。中世の時代にあって、世界はひたすら環境音と人の声の世界であり、音楽はそれなりに稀な世界だったんだ、とも思います。これは自戒です。
今回、楽器を作るにあたり、改めてそのことを感じました。手元にあるこの小ぶりの楽器、それと同類のものたちが、人の住む今よりも静かな世界に音楽をもたらしていたと考えると、なんだかおセンチになってしまう、そんな夜です。

で、終われたらよかったんですけど、戦いはまだまだ続く。ボンタを待ち受けていた次の戦場はアフガン………ではなく、バーチャルYouTuberだったのでした。
ちょっと何言ってるのか自分でもわかんないっすね。
(文:巡空艦ボンタ)

 

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